2011-01-13 14:55:32 +0900
37signalsのJason FriedがInc.comで連載しているコラムの2010年11月分、Go Ahead, Raise Your Business's Pricesをようやく読んだ。シンプルなiPad用スケッチアプリDraftに9.99ドルという価格をつけた理由について、37signalsらしいセンスが伺えたので要点をまとめてみました。
- 9.99ドルでリリースした直後の37signalsブログへのコメントの一部
- なんてこった
- 気が狂ったのか?
- 37signalsのオフィスにはガスでも漏れているの?
- 1.99ドルや2.99ドルといった価格をつけることもできたが…
- むしろ価格付けを「Draftに対するユーザーからの要望を少なくする(reduce customer demand for Draft)」ためのツールとして活用したかった
- より少ないユーザーにDraftを買ってほしかった
- 価格が1ドルや2ドルなら、簡単に10,000ダウンロードくらいは達成できただろう
- 一見、大成功に思えるが、10,000人のユーザーに対応するリソースが必要になるということを考えると、そうとも言えない
- 10,000人のうちのかなりの人には色々と対応する必要があるだろう
- 文句を言う人
- 色々な機能をリクエストしてくる人
- 質問をしてくる人
- ソフトウェアビジネスとはそういうもの
- 37signalsはソフトウェアビジネスが好きだしユーザーにもできるだけハッピーになって欲しいから、それには全力で取り組む
- しかし、37signalsの主力製品は月額24ドル〜149ドルで売られている(Basecampといったサービスの利用料)
- これくらいの価格付けなら、素晴らしいサービスを提供する余裕が持てる
- では、1度きりの1.99ドルしか払ってくれないユーザーを何千人も抱えて、素晴らしいサービスが提供できるだろうか?
- 月額24ドルや月額149ドルを支払ってくれるユーザーに割ける労力が減ってしまうだろう
- そこで、領土を増やすのではなく小さな島を作ることにした
- Draftの価格を同様のアプリよりもかなり高い9.99ドルに設定する
- この価格でも購入してくれるユーザーは「自分にとってのDraftの価値」を理解していて、9.99ドルを適切な価格だと考える人達だろう
- Draftはこれまでに2,000ダウンロードを達成し、約20,000ドルの利益をあげている
- 10,000〜20,000人のユーザーから20,000ドルの利益を得るよりも、2,000人のユーザーから20,000ドルの利益を得るほうが、より嬉しい
- 2,000人のDraftユーザーであれば、既存のユーザーと合わせても、現在のリソースで適切なサービスを提供することができる
- 9.99ドルという価格付けに非難があったように、このやり方はみんなを幸せにするものではない
- 多くの人は、37signalsをバカなやつらだと思うだろう
- しかし、37signalsが「クレイジーだ」と言われるのはこれが初めてではない
- 私(Jason)には、自社製品を無料で配布することのほうがクレイジーに思える
このような場合、一般的な企業では社内リソースを増やすことで対応してしまい、結果として利益が増えた分だけリソースも消費してしまいがちですが、37signalsはあえて上記のようなスタンスを貫くことで小さなチーム、大きな仕事を実現しているのでしょう(そして、より快適なオフィスやスーパーカーが手に入るというわけだ!)。